★古今亭志ん朝/お若伊之助(根岸お行の松 因果塚の由来)

古今亭志ん朝


日本橋石町に「栄屋」さんと言う大きな生薬屋さんがあった。
そこの一人娘の”お若”さんは、十七で栄屋小町と言われるほどの大変な美人であった。
お嬢さんが一中節を習いたいと言うので、かしら・ 勝五郎に相談すると元武士で師匠の”菅野伊之助”を紹介された。
またこの伊之助がキムタクを混ぜた様ないい男であった。
女将の心配通り二人の中は親密になっていったので、手切れ金25両を渡して別れさせたが、お嬢さんは得心がいかなかった。
気晴らしにと高根晋斎叔父さんの剣道場のある根岸御行の松近くに移されたが、毎日寝たり起きたりの生活をしていた。
1年後のある晩、伊之助が訪ねてきた。
今までの無沙汰をわびながら部屋に招き入れて……それから毎晩旧交を温めていた。
そのうちお嬢さんのお腹に変化が出た。
無骨な剣術の先生でもこれは分かった。
会いに来た伊之助を確認して、翌日 勝五郎を呼びだし、伊之助を処分してこいと言い捨てる。
かしらは伊之助の住まい両国まで走って 行って、裏切りを問いつめるが、「夕べはかしらと吉原でいっしょだった」。
聞いて根岸まで取って帰して、話をすると「茶屋に下がると見せて、籠でこちらに来たのでは?」。
かしら、 また立腹して、 両国に戻ってきた。
問い詰めると「昨晩は一睡もしないで、かしらと話をしていたではないですか」。
納得して根岸へ駆け戻った。
先生じっと考えていたが、今晩も来るであろうから一緒に見届けよう。
と酒肴を振る舞って時間を待ったが、かしらは昼間の走りでバタンキュウ。
いつもの様に伊之助が部屋に入った。
かしらを起こし中を覗かせると、昨日は違うが、今日は伊之助だという。
種子島に火種を詰めて引き金を引くと命中、伊之助は絶命した。
死骸を改めると 伊之助ではなく大ダヌキであった。
お若さんがあまりにも伊之助を慕うものだから狸が化けて毎夜通って来ていた。
お若さんは月満ちて産んだのは双子の狸で、絶命して葬り 、塚を建てた。
根岸御行の松のほとり、「因果塚」の由来でした。
*出典:http://ginjo.fc2web.com/48owaka_inosuke/owakainosuke.htm

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