三木助に対しては概ね好意的である7代目立川談志も「三木助さんの芝浜は好き嫌いでいえば嫌でした。
安藤鶴夫みたいなヤツのことを聞いて、変に文学的にしようとしている嫌らしさがある」「芭蕉と言わずに翁の句という」と批評している。
(バンブームック1 立川談志「芝浜」より)
●女房の造形
「実は大金を拾ったのは現実だった。あたしが嘘をついた」と、最後に衝撃の告白をする女房。この女房をどの様な人物として造形するか、これも重要である。
自堕落な亭主を見事に更生させる、立派な女房として描かれる場合が殆んどである。
それを聴き手は「実に偉い女房だ」「これこそ文句無しに素晴らしい夫婦愛だ」と賞賛する。
しかし、この演出法に対しては、「わざわざ更生させる為に嘘をついてやったのだ、と言わんばかりで、その偉ぶり具合が鼻につく」として嫌う意見もある。
これとは正反対に7代目立川談志の型では、告白の時に「騙して申し訳無い」と心から謝罪して涙を流す、偉ぶらない女房として造形する。
反骨家の談志らしいアンチテーゼと言える。
談志は三木助版を意識し、風景描写さえもなくすような演出を行ったこともある。
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