★三笑亭可楽(八代目)立ち切り(たききり)

三笑亭可楽(八代目)

たちぎれ もしくは たちきれ は、古典落語の演目の一つ。立ち切れと漢字で表記されることもあるほか、たちきり、たちぎれ線香(たちぎれせんこう)とも。

もとは上方落語であるが、現在は東京でも広く演じられる。元々人情噺の少ない上方落語発祥の噺としては、東京に定着した数少ない噺の一つである。

原話は江戸時代の笑話集『江戸嬉笑』の一編:反魂香、返魂香(はんこんこう、はんごんこう)」。
初代松富久亭松竹の作といわれる。東京へは六代目桂文治あるいは三代目柳家小さんが移したといわれる。

一般的な滑稽噺のような抜けた人物が登場せず、クスグリが非常に少ない。なおかつ悲劇的になりすぎないように演じる必要があり、演者には高い技量が要求される。
三代目桂米朝は「数百を越える上方落語の中で、最も神聖化されている噺と評している。
また、若旦那が「跡取り息子が丁稚の果ての番頭に乞食にされたら本望じゃ! 見事、甲斐性あったら乞食にせえ!」と一気にまくしたてるさまを番頭が悠然と聞き、煙草を一服吸ってからいさめるシーンについて、「いきり立つ若旦那を前に対して悠々と煙草を吸う、あの演出は誰がかんがえたのでしょうか」と絶賛している。

近年では笑福亭鶴瓶の口演が有名。
東京では3代目春風亭柳好や8代目三笑亭可楽らが主な演者である。

道楽ばかりをしている若旦那、親族会議の結果、改心の為に百日間の蔵住まいを命じられる。
ところがそれを知らぬ芸者の小糸は、若旦那を思い、連日矢のように手紙を寄越すも、番頭がそれをしまいこんでしまうので、若旦那のもとには届かない。
そしていつしか小糸からの手紙は来なくなった。

百日が過ぎ、蔵から出してもらった若旦那は、そのことを番頭から聞き、最後に届いた手紙を見せてもらうと、いてもいられなくなり、小糸のいる店を訪れる。しばらく顔を見せなかった若旦那の姿を前にして、店の者は大層驚く。
というのも、若旦那が訪れなくなったことを悲しみ、小糸は亡くなったというのだ……

江戸にも原話は見られるが、笑福亭の祖である京都の初代松富久亭松竹の作といわれるものを、三代目柳家小さんが東京に移入した落語である。
演題にある「たちきり」とは、芸妓の玉代を線香で計り、その線香が立ち切れる(燃え尽きる)までを座敷の時間とした花柳界に由来している。

落語の中でそうした世界を舞台にした男女の仲が描かれるとなると、その恋は不純なものが多く、若旦那が遊びの行く末に勘当になるという展開が多い中、この噺では相惚れの末に芸者が命を落としてしまうという純愛悲劇が描かれている。

若旦那は蔵住まいの中で、店のことを考えるようになり、改心をするが、その一方で芸者小糸はその間も若旦那のことを思い続け、焦がれ死にをしてしまうのだ。

それだけに、小糸の若旦那を想い続けていた気持ちを、店の女将が静かに語って聞かせる場面は切なくて悲しい。

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