
私の記憶が正しいなら: 善い人は、忘れることが上手い。 amzn.to
「あの子のこと、まだ覚えてないの?」
十年ぶりに届いた、旧友からのメッセージ。
たった一行。名前すら書かれていない。
藤原奈央、三十二歳。自分のことを「まあまあいい人間」だと思って生きてきた。
——覚えていない。
「あの子」が誰なのか、本当に覚えていない。
旧友に会い、親友に会い、記録を辿るうちに、
奈央の「きれいな記憶」の底から、別の物語が浮かび上がる。
大学時代、サークルにいた一人の女性。
おとなしくて、映画が好きで、いつも写真の端に立っていた。
彼女はある日、いなくなった。
奈央はそれを「事情があったのだと思う」と片づけていた。
三人の旧友は、全員が同じことを覚えている。
奈央だけが、覚えていない。
「あなたの記憶と、私の記憶は、たぶん全然違う」
「味方でいないと、次は自分がターゲットになるから」
「覚えていないまま生きていくことは、私のことをもう一回消すのと同じ」
善意に見える言葉で、誰かの居場所を奪うことはできる。
しかも本人は、それを覚えていない。
覚えていないから、自分は善い人間のままでいられる。
これは、そういう人間の物語。
あなたも——覚えていないだけかもしれない。
【こんな人に読んでほしい】
・湊かなえ、真梨幸子、秋吉理香子が好きな方
・「信頼できない語り手」ものが好きな方
・読後に日常の見え方が変わる小説を探している方
・人間関係の「見えない暴力」に興味がある方
志那羽岩子による心理サスペンス。
一人称の語りが崩壊する、約三万八千字の中編小説。
『私の記憶が正しいなら』を書きました。
志那羽岩子です。
新作『私の記憶が正しいなら——善い人は、忘れることが上手い。』をKindleで出版しました。
今回はホラーではありません。
心理サスペンスです。幽霊も怪異も出てきません。出てくるのは、自分の記憶を信じている一人の女性と、彼女が忘れたことを覚えている旧友たちです。

きっかけは、ある疑問でした。
「善い人が、無意識に誰かを傷つけていたとして。そしてそれを本気で覚えていなかったとして。それは許されるのか」
この問いに答えを出すつもりで書き始めたのですが、書き終えてみると、答えは出ませんでした。出なかったことが、たぶんこの小説の正直なところです。

主人公の藤原奈央は三十二歳の会社員です。自分のことを「まあまあいい人間」だと思っています。大学時代の友人とは自然に疎遠になった。それは社会人なら普通のことだと思っている。
ある日、十年ぶりに届いたメッセージ。
「あの子のこと、まだ覚えてないの?」
奈央は「あの子」が誰なのかわかりません。本当にわからない。思い出そうとしても、名前も顔も出てこない。
でも旧友たちは全員、覚えている。奈央だけが覚えていない。
この小説は、奈央の一人称で書いています。読者は奈央の目を通して物語を読むことになります。奈央が見ているものだけが見えて、奈央が覚えていないものは見えない。
それがどういうことなのかは、読んでいただければわかります。
一つだけ言えるのは、この小説を読み終えたあと、自分の記憶を少しだけ疑いたくなるかもしれない、ということです。覚えていないことの中に、何が埋まっているか。忘れたのではなく、覚えていないことにしたものが、どれだけあるか。

怖い話は書き慣れていますが、今回が一番怖かったかもしれません。幽霊より怖いものを書いた気がしています。
『私の記憶が正しいなら——善い人は、忘れることが上手い。』
著:志那羽岩子 Kindle版・Kindle Unlimited対応
定価:99円
前作もよろしければ。
『不可視のビーコン』著:志那羽岩子
『#ずっと見てたよ:推し活記録と、消えたアイドルの話』
著:志那羽岩子
『在宅勤務ログ——記録は、まだ続いている。』
著:志那羽岩子
《7.83 ――地球は、まだ鳴っている》著:志那羽岩子

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