宿屋嬶(やどやかか)は上方落語の演目の一つ。艶笑噺(ばれネタ)に属する。
あらすじ
宿屋の贔屓の客が「あんたとこの嫁はん一晩貸して呉れ。」と主人に頼み込む。
とてつもない願に主人は驚き「…そら、いつもお世話になってはる旦那さんのことでっさかい、嫌とは言えまへんけど。」と言うものの、うちの女房は見ての通りのご面相で、とても美人とは言えないのに「自分の女房をこう言うのも変でっけど、何でまた、あないなお多福をほしがりますねん。」と不審がる。
でも、たっての頼みに「そんなら一晩お貸ししたします。」と主人の了解を得て、客は女房と同衾する。
次の日もまた次の日も女房を貸してくれと客が頼むので、主人も流石に「もし、ええかげんにしとくなはれ。」と憤慨し「なんで、そないにうちのやつを抱きたがりますねん。」と重ねて訊くと、客も「それがな。事をしてるときのお前はんの女房の声がたまらんのや。わいも一度声を上げさせて泣かしたいんやけど、この前もさらにこの前もしても泣きよらんねん。」と告白する。
「へえ。そしたらあの泣き声でっか。」
「そうや。」
「あれ、わたいでんねん。」
概要
筋の運びからサゲに至るまで、フランス小噺のような粋な出来である。古くから伝わるばれネタで、かつては「宿屋陰門」という題であったが、刺激が強すぎるので、橘ノ圓都によって現行の題に改められた。
放送ではオンエアできないが、速記やレコード、テープ、などで聞くことができる。
艶笑噺は、濃厚な内容でも演者の腕しだいで優れた作品に生まれ変われるが、この演目も、機知に富んだ内容でありどのよう巧く演じられるかは演者の腕の見せ所である。
初代森乃福郎、2代目露の五郎兵衛の得意ネタでもある。
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