第22作 1978年(昭和53年)12月27日公開
キャスト・登場人物
- 車寅次郎:渥美清(50)
- 諏訪さくら:倍賞千恵子(37)
- 諏訪博:前田吟(34)
- 諏訪満男:中村はやと(9)
- 車竜造:下條正巳(63)
- 車つね:三崎千恵子(58)
- タコ社長:太宰久雄(55)
- 御前様:笠智衆(74)
- 源公:佐藤蛾次郎(34)
- 老人:吉田義夫(67)
- 旅の雲水:大滝秀治(53)
- 小島瞳:泉ピン子(31)
静岡県川根本町の井川ダムで、失恋して泣いている時に、寅さんに声をかけられる。千頭駅前の食堂“おざわ屋”で寅さんに、愚痴をぶちまける。その後、とらやを訪ねることになるが…… - 添田肇:室田日出男(41)
早苗の従兄妹の高校教師。小さい時から、兄のように早苗を見守ってきたが、その胸の内は、彼女への思慕に溢れている。それを寅さんに見抜かれてしまう。 - 諏訪飈一郎(ひょういちろう):志村喬(73)
博の父。元北海道大学名誉教授。研究一筋の仕事人間の父に、博は反発し家出。再会したのは8年後、博の結婚式だった。第8作『寅次郎恋歌』で寅に“家庭の大切さ”、第22作『噂の寅次郎』では “人生のはかなさ”を教える。
マドンナ:荒川早苗/大原麗子(当時32歳)
夫と別居中、美容院を営む友人宅に下宿している時に、墨田区の職安で求人募集を見てとらやに勤めることに。とらやにとっては久々の女店員となった。旧姓・荒川早苗。美しい早苗の出現に、旅に出ると大げんかした寅さんは、仮病を使うが、救急車を呼ぶ騒動となる。
NHKドラマ「幸福試験」(64年)で本格デビュー後、東映に入社。「網走番外地」シリーズや、渥美清主演の『喜劇 急行列車』(67年)などに出演。その後、テレビに活躍の場を移し、お茶の間の人気者に。シリーズは22作『噂の寅次郎』と、34作『寅次郎真実一路』で二回マドンナを演じている。
あらすじ
亡父の墓参りに来た寅さんだが、ささいなことでタコ社長と大喧嘩してまた旅に出た寅さん。
旅の途中、静岡県の大井川にかかる蓬莱橋で雲水(大滝秀治)に、“女難の相”があると告げられる。
女難の相……重々承知している寅さんは、早速失恋した小島瞳(泉ピン子)を慰める。
旅先で偶然、博の父・飈一郎(ひょういちろう・志村喬)と出会った寅さんは、彼に人生のはかなさについて諭され、「今昔物語」(コンニャク物語)の本を借りて、柴又に帰った。
今昔物語 (ちくま文庫)
福永 武彦 筑摩書房 1991-10-24
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その頃とらやでは、職業安定所の紹介で、荒川早苗(大原麗子)が店を手伝い始めていた。
寅さんは旅から帰るやいなや、家族を集め飈一郎から聞いた話をいつもの調子で語り始める。
翌朝、修業の旅に出ると家を出ようとするところに、早苗が出勤して来る。彼女の美しさにハッ!としてグ~♪となる寅さんだが、旅に出ると言ってしまった手前、やむなく店を出る。通りを歩いていると、偶然さくらに出くわした寅さんは急に腹痛を訴える。心配した早苗が119。救急車に乗せられ病院に担ぎ込まれた寅さんだったが、たいしたこともなく、「単なる栄養失調」との診断で入院することもなく、すぐに家に帰された。
一騒動が過ぎ、とらやに帰った寅さんは、早苗が結婚していたことを知り意気消沈するが、現在別居中であることを聞いて急にウキウキしながら彼女を励まし力づけた。早苗は寅さんの優しい心づかいに思わず涙ぐみ、「寅さん、好きよ♪」とまで言うので、とらや一家の心配は募るばかりであった。
ある日、早苗は従兄の添田肇(室田日出男)に夫との離婚届を渡された。高校で教師をしている添田は密かに彼女を慕っていた。暫くして、早苗の引っ越しの日、手伝いに出かけた寅は、そこで生徒を連れてキビキビと働く添田を紹介された。気やすく早苗に話しかける寅さんに、憮然とする添田。
やがて、そんな添田が、とらやに早苗を訪ねてきた。添田は外出している早苗を暫く待っていたが、意を決するように立ち上がると、手紙と預金通帳を、早苗に渡すように、寅に託して立ち去る。
添田が出て行きかけたとき、早苗が戻って来たが、二言三言、言葉を交わしただけで添田は立ち去ってしまう。その添田の手紙の内容は……
『僕は学校を辞めて、故郷の小樽に帰るが、早苗は、頑張って生きて欲しい』
預金通帳には、100万円の数字が記入されていた。添田の気持を悟った寅さんは、「早く後を追え!今ならまだ駅にいる」と、ためらう早苗を鬼気迫る面持ちで説得する。寅さんの顔を見つめていた早苗は、振り返ると駅に向かって一目散に駈けだした!
そして寅さんは、また旅に出る……
ロケ地
- 長野県(木曽福島)、静岡県(大井川鉄道)
- 旧墨田区役所(現 第一ホテル両国) – 早苗が離婚届を出した後、両国駅へ歩いていくシーン。墨田区横網1-6。現在建物は取り壊され、近辺は面影がほとんどないが、区役所隣の印刷所の建物は現存。
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