風呂敷(ふろしき・ふるしき)は古典落語の演目の一つ。別題は『風呂敷間男』。
原話は安政2年(1855年)に刊行された『落噺笑種蒔』の一遍である「みそかを」。
そのほかにも諸説あるが、真相は不明である。元は『艶笑落語(バレ噺)』であったが、時代を超えるごとにその要素は低下し、現在では単なるこっけい話となっている。
主な演者には、初代三遊亭圓遊や初代柳家小せん、そして5代目古今亭志ん生などがいる。
圓遊は台湾の話を翻訳して、このような噺を演じたことが『百花園』第7巻74号に記述されている。
また、志ん生はこの噺を十八番にしていた。
志ん生師匠の口演を規定とした『艶』のないあらすじ。
ある日、亭主の熊五郎の留守中にお崎の幼馴染の半七が遊びに来る。
2人で語り合っていると、路地のどぶ板で足音がする。
亭主が戸をとんとんたたいて「おい、今けえった」
こんなところを嫉妬深い亭主に見られたら、『不倫』と勘違いされて殺されかねない。
如何しよう…と悩んだ挙句、半七を戸棚に押し込んで隠すことに。
どうせ亭主は酔っぱらっているだろうから、うまく寝かせてその隙に逃がそうという算段だ。
ところが、入ってきた熊五郎は問題の戸棚の前に寝そべると、そのまま大いびきで寝込んでしまった。
これでは戸を開けられない。
かみさんが困っていると、そこへ鳶頭の政五郎がやってくる。
「助かった!」、そう思ったお崎さんは鳶頭に相談。
鳶頭も快く後処理を引き受けた。
隣の家から風呂敷を借りてくると、お崎さんを外出させてから熊をゆさぶり起こす。
「あぁ、鳶頭。お崎は如何しました?」
「買い物に行ったよ。ところで、面白い話があるんだが…聞くかい?」
「へぇ」
「今日、友達の家に行ったらな、おかしな話があったんだよ。そこのかみさんが留守番をしていると、そこへ幼馴染が遊びに来た。乱暴者の亭主の手前、追い返そうとしたかみさんだが、結局男を家に入れた」
「悪いアマだ!! 俺が亭主だったら張り倒してやりますよ」
「そうか。マァ、その幼馴染と語り合っていると、亭主が不意に帰ってきたと思え。で、そのカカアがあわ食って、戸棚に男を隠しちまった」
「へえー」
「すると、亭主が酔っぱらって、その戸棚の前に寝ちまった」
「そりゃ、困ったろうなぁ」
「そこで、オレがかみさんに頼まれて、そいつを逃がしてやったんだ」
「どうやったんです?」
「よく聞け! 寝ころんでたやつを、首に手をこうかけて起こして」
「ふんふん」
「余所見をされちゃいけないから、脇から風呂敷を持ってきて亭主の顔へこう巻き付けて…。何か見えるか?」
「いいえ」
「そこでな、俺は戸をこういう塩梅にガラリと開けた」
「なるほど」
開け放たれた戸棚から、ヘニャヘニャになった半七が出てきて鳶頭に平身低頭。
「拝んでねえで逃げろ、と目で合図をして…下駄なんかを忘れるなと声をかける」
「へぇ」
「そいつが影も形もなくなったら、戸を閉めて、それから亭主にかぶせた風呂敷を、こうやって」
ぱっと風呂敷を取ると、熊が膝をポンとたたいて「なあるほど、こいつはいい工夫だ」
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