元薬物中毒者
あの国民的元プロ野球選手も、あのカリスマミュージシャンも、その魔の手にはまった怖ーい薬物。
一度使うとどうなってしまうのか?
そして、どんな地獄が待っていたのか?
本日のテーマは「元薬物中毒者」。
元薬物中毒者のエリさん(仮名)は、見た目はむちゃくちゃ普通の子。
「大学生みたいですよね」(山里)
「だのに!」(YOU)
エリさん(仮名)は29歳。
薬物歴は13歳からマリファナ・シンナー、20歳から覚せい剤を使用。
重度の依存症でした。
結構な量をやってた?
最終的には毎日、5分おきくらいに使っていました。
注射ではなく《あぶり》で。
【あぶり…薬物を火であぶって出た煙を吸うこと】
薬物を使い始めたきっかけは?
きっかけはマリファナでした。
13歳のときに先輩に「アメリカのタバコだよ」と勧められたのが最初です。
「アメリカのタバコ」と信じ切って吸ってしまいました。
後日マリファナだと知らされ「えーっ、うそでしょ!?」という感じになって…。
それは断るの難しかった?
断ったら仲間から外されると思って…。
「そうじゃない友達とかいなかったの?」(YOU)
学校が荒れてて、不良グループの方が多かったのです。
そっちのグループの方が華やかに見えて、それを吸うだけで不良の仲間入りできると思いました。
薬物を使うとどうなるの?
「マリファナ吸ったときはどんな感じだったか覚えてます?」(山里)
体がポカポカしてきたり、とにかく笑いっぱなしになります。
親が厳しかったので、反抗心もあって薬物に手を出しました。
ヤバいことをやってる意識はまったくありませんでした。
「でも、匂いとか…」(YOU)
匂いを消すためにいろいろ努力しました。
歯磨き粉のチューブを一気に半分食べたりとか。
牛乳を一気に飲むとか。
匂いのキツイものを胃の中に入れてごまかしました。
覚せい剤のきっかけも、最初は軽いノリでした。
「それは同じ先輩?」(YOU)
友達で、一緒にバイトしていた女の子でした。
その子がトイレで吸っていて「何やってんの?」と言ったら「やる?」みたいな感じのノリでした。
その場では覚せい剤とは言われず、「痩せるよ!」と軽く誘われました。
「それってけっこう多くあることなのかな?」(山里)
「痩せる」と言われれば女子は食いつきます。
”2~3日すれば4~5kgは簡単に落ちるよ!2~3日したらやめなよ”と言われれば、《2~3日くらいは》という感じから始めます。
でも、2~3日すると結局ハマっちゃってるのです。
どうやって薬物を手に入れた?
今は簡単にクスリに出会えてしまいます。
ネットでも簡単に手に入ります。
エリさんの場合はクラブで、売人が音楽に合わせて手で合図をするのです。
「クラブのトイレでは、普通に回ってきちゃったりするんですよ」(YOU)
「えー…!?」(山里)
「それはこっちがNOって言わないと…」(YOU)
タバコのフィルターに覚せい剤を染み込ませて吸わせちゃう人もいます。
元薬物中毒者に聞いた!「薬物に手を出したきっかけ」
【仕事のストレスがなくなると聞いて…】元薬物中毒者ワタルさん(仮名・38歳)
仕事上のストレスとか、嫌な事が続いて、それをなかったことにしたいと思って…。
「みんな使ってるよ」って言われたら「やっちゃおうかな」と言う感じです。
★
【好きな人にカッコ悪い姿を見せたくなくて…】元薬物中毒者アキラさん(仮名・37歳)
出会い系サイトで知り合った相手の家に行って、そこで相手の人から勧められて覚せい剤を使ったのが最初でした。
相手の方が、健康的で明るくて社交的で、すごくまともだったので、「まあ、この人なら大丈夫かな」と思ったのと、ここで「帰ります」ってやるのもなんか相手に悪いし、男として格好悪いのかなという感じが…。
★
【好奇心が膨らんで】元薬物中毒者シンさん(仮名・32歳)
中学校の「薬物を使っちゃいけませんよ」みたいな教育のビデオを見て、「やってはいけません」と言われたら逆に「やりたくなる」みたいな…。
「やってみたい」って単純に思いました。
どうやって覚せい剤を使ってた?
エリさんは、アトマイザー(香水などを入れるスプレー付き容器)に覚せい剤を入れ、それにストローを刺して、人差し指と中指に挟んで転がしながら、ライターであぶって溶かして、そこに出た煙をストローで一気に吸うって感じでやっていました。
覚せい剤を使うとどうなちゃうの?
エリさんは、トイレで最初に使いました。
トイレの電気とか鏡がすごく綺麗に見えて、30分以上トイレで見とれていました。
「ワー!」って固まっちゃう、そこでフリーズしちゃうんです。
カラオケボックスに、2日間いることに気づかないでずっといました。
「延長料すごくない?」(YOU)
「そこじゃなくないですか、問題!?」(山里)
延長の電話を取ってることすら、気がつきませんでした。
料金を払うときにすごい金額になっていました。
ドン・キホーテに行ったら、昼から翌朝の5時まで店内にいました。
ずっとひたすら商品を一つ一つ見ていくのです。
元薬物中毒者に聞いた!「薬物を使うとどうなってしまうのか」
【五感が異常なくらい…】元薬物中毒者リョウさん(仮名・30歳)
吸ったときは解放されるというか、五感が研ぎ澄まされる感じです。
音楽を聴くと、一つ一つの音が全部分かれて鮮明に聞こえます。
味覚は特に、食べている物がものすごくおいしく感じます。
一番好きだったのはデリバリーのピザで、ずっと食べてて、もっと食べたいからどんどん食べるんです。
無言でただひたすら食べる、もう異様な光景です。
止まらないです。
★
【見るもの全てに大爆笑】元薬物中毒者シンさん(仮名・32歳)
見るものが何でも面白くなって、ただ車が道路を走っているのを見て、車が道路を走ってること自体が楽しい、大爆笑ですよね。
笑い過ぎて腹が痛いっていう感じがずっと続きます。
★
【集中力が三日間途切れなくて…】元薬物中毒者タケさん(仮名・34歳)
集中力が増すので、周りを気にしないで楽しめるんですね。
テレビのアンテナの接続部分が可笑しくて、それをずっといじくりまわしていました。
三日三晩、ずーっと。
《薬物を使い続けた結果、とんでもない地獄が待っていた…》
【手が震えて包丁が…】元薬物中毒者リョウさん(仮名・30歳)
築地の市場で7年間働いていました。
ある日、ただお刺身のサクを切るだけ、ずっとやり続けた行為なのですが、包丁を持つ手がプルプル震えるようになって…事実上のクビですよ。
★
【カーテンから人が…】元薬物中毒者カトウさん(仮名・48歳)
幻覚・幻聴がひどくて、カーテンから人が出てきたり、足音が聞こえたり。
換気扇の音が人の話し声に聞こえるときもあります。
★
【夜道を大暴走】元薬物中毒者コウジさん(仮名・46歳)
禁断症状みたいなのが、「もうやりたい、やりたい」って…。
声あげて「うわー、やりてー!」ってなって…。
それでドアを開けて走り出しちゃって、ダッシュでずーっと、果てしなくどこまでも…。
どのへんで中毒になるの?
もう、一回吸ったらたぶん、やめられないんじゃないかなと。
「マジかあ!」(YOU)
その瞬間が、自分の人生の中で一番良かった瞬間になっちゃうんです。
エリさんの場合は、子どもがいてもやめられませんでした。
子どもは今、9歳で小学校4年生です。
20歳で出産後に覚せい剤にハマりました。
「旦那様は?」(YOU)
その人とは籍を入れましたが、浮氣が原因で1年で離婚しました。
その後、働いていたパブの客が売人で、その売人と3人で暮らしはじめました。
売人なので、家の中にはやりたい放題の覚せい剤がありました。
子どもの面倒は見られていた?
このままじゃダメだと思いながら、だんだん子どもを理由にさらに覚せい剤にハマっていきました。
《子どもが泣くから、イライラしないためにやらなきゃ》とか。
自分は夜働いていて昼は眠い。
でも、子どもは夜寝て、昼は3時間置きに起きる。
それに対応するためには、覚せい剤やれば寝ないので…。
体はおかしくならなかった?
覚せい剤が切れると、インフルエンザの一番キツイときのような感覚になります。
高熱でフラフラして、布団から起き上がれない状態。
それが、覚せい剤を一回するだけでシャキッとなったら…もうやるしかないのです。
それをずっとやっていくちに、子どもを託児所に忘れちゃったりとか。
洗い物や家事もできていない状態だったので、何日か前に頼んだ出前の漬物を子どもがかじっていたりとか。
ストローだけを子どもがかじってたりとか。
「こりゃ、えらいことだぞ」(YOU)
「いや、えらいことですよ」(山里)
捕まらないの?
捕まったのは23歳のとき。
でも、ガサ入れに来たお巡りさんを見た瞬間、「ありがとうございます」とずっと言ってました。
「助かった!」と思いました。
ずっと自分の中で葛藤していました。
やめたいと思っているのに、体が勝手にやっているのです。
留置所を出て、そのままダルクに連れていかれました。
薬物依存症の治療を行う病院や施設はさまざま。
なかでも代表的なのが《日本ダルク》
全国に70ヶ所ある加入施設では、10人前後の共同生活を通じて依存症克服を目指しています。
エリさんは2年間、ダルクで生活していました。
施設にいる人たちは、全員「まだやりたい」と思っています。
「私もうやりたくないんですよ」という人はいません。
ダルクで何をするの?
基本的には、ミーティングで自分の話を打ち明けます。
例えば、「何で薬物をやったのか」というテーマについて、自分の話をします。
悩みをためるより、口に出す方が楽になっていきます。
そのほかにも、「バーベキュー」や「ジェットスキー」など、発散することで気を紛らわし、薬物以外の楽しみを見つける狙いで、ダルク毎に独自のプログラムが行われています。
社会復帰はできた?
今は普通に社会復帰して、販売員として店頭に立っています。
「順調に行けたの、社会復帰は?」(山里)
一歩外に出たときに、普通の人とどう接したら良いのかわからなくて怖かったです。
面接に行く前にもすごい泣いたりとか。
「そんな状況でよく社会復帰できたね、なんで?」(山里)
「支えてくれる人がいて…」
「支えてくれる人ってのは?」(山里)
「あのー、彼氏です」
彼とは2年前から交際中。
支えてくれる彼はどんな人?
「すごい優しい人です。私を、全部そのまま受け入れてくれてる…」
「全部知ってんだ」(YOU)
「全部知ってます」
エリさんが施設にいるときにボランティアに来てくれた男性でした。
《今日、彼が来てくれています!》というカンペのあと、彼・コウタさん(仮名・31歳)が登場。
「あっ、めちゃくちゃ優しそう」(山里)
「なんだよ、かわいらしい~!」(YOU)
「はじめまして」
「コウタさんはダルクにボランティアに来てたってことは、コウタもコウタでコウタだったってこと?」(YOU)
「いや、ちがいます」
「私はやったことないです」
「ただ助けにいったってことですよね」(山里)
「なんだ、いい人じゃねえか。汚点のないいい人じゃないか!」(YOU)
つきあうときの葛藤は?
「人生で真逆の人で、子連れの…、つきあうとき葛藤とかあったんじゃないですか、コウタさん」(山里)
はじめは葛藤がありました。
つきあう前に友だちとかに相談したりして。
友だちには「やめたほうがいいよ」と反対されました。
エリさんが、一生懸命にボランティア活動に参加する姿を見て、いいなと思い告白しました。
そのときはクリスマスで、今つけているネックレスをプレゼントされ、エリさんもキュンとしました。
「そのキュンは、あのキュンに勝たなかった?」(YOU)
「そのときは、燃えちゃったんで、私も」
「だから、それだよ!」(YOU)
そこが、薬物をやめれる大事な瞬間でした。
「その気持ちがずっと続いてくれれば、『やめれます』ってはっきり言えるんですけど」
「続くよね、コウタくん。脅迫みたいになってる…」(YOU)
(コウタさんと)おつきあいする上で思うところあった?
「『本当にに私でいいのかな』っていう…、ヤク中だし」
「『ヤク中だった』にして」(YOU)
「ヤク中だったし、大丈夫かな…。『裏切っちゃって…』とか、マイナスなことしか考えなかったですね」
エリさんを実家に連れてきて、コウタさんは両親に会わせましたが、特に嫌なことも言われず、和やかに過ごしました。
「できた親だなあ~」(YOU)
コウタさんの両親が気さくに接してくれたおかげで、エリさんは楽になりました。
つきあうときの条件は?
もし再びクスリに手を出したら別れるという約束をしています。
こんなに真剣に愛してくれるコウタさんを前にしても、「クスリをやりたい」という誘惑はまだあるようです。
アジアンショップなどでお香の匂いがすると、薬物を使いたくなるそうです。
重度の中毒状態のときに、お香で匂いを消していたので、その匂いがすると反射的に「ハア~」と思ってしまいます。
コウタさんによって、今まで3年間、薬物に手を出さずにいられたということもすごい事だと。
今、幸せだなと思う瞬間は?
薬物を使っているときは、朝も昼も夜も何もわからず、時間の感覚がなくなります。
それが今は、「おはよう」から始まって「おやすみ」まで、普通に家族であいさつし合えるのが一番幸せです。
結婚しないの?
いずれはしたいなとコウタさんは考えています。
[出典:2016年10月19日放送「ねほりんぱほりん」]
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