★古今亭志ん生(五代目)干物箱

古今亭志ん生(五代目)


干物箱(ひものばこ)は古典落語の演目の一つ。
原話は、延享4年(1747年)に出版された笑話本・「軽口花咲顔」の一遍である『物まねと入れ替わり』。
別題は「吹替息子」。主な演者として、8代目桂文楽や3代目古今亭志ん朝、10代目金原亭馬生、4代目桂三木助などがいる。

あらすじ

「遊びに行きたし、金は有り。されとて親父が恐ろしい…やれやれ」
伊勢屋の若旦那・幸太郎は三ドラ煩悩を極めた《達人》。その日も「銭湯に行く」と言って出てきたものの、やはり足が勝手に吉原へと向いてしまう。
「困ったな。遊びに行きたいけど…親父が怒るだろぅなぁ。アーア、僕が二人いればいいのに。そうだ!」
幸太郎の友達に、貸本屋渡世を営んでいる、声色の得意な善公と言う奴がいるのだ。あいつに代役をやらせれば…。
奴さんの住む長屋へ駆け込むと、善公は笑顔で迎えてくれた。
「若旦那の声色? 十八番ですよ! あれでしょ、若旦那と同じ格好をして吉原に乗り込み、花魁をびっくりさせて遊ぶの」
「違うよ。ウチの二階にいて、親父が話しかけたら僕の声色で相手をしてほしいんだ」
「えー…!」
お小遣いと羽織一枚で買収し、善公と一緒に伊勢屋へと戻ってきた若旦那。善公に表から声をかけさせ、親父が騙されたのを確認してから遊びに出かけた。
「代役でお金儲け…か。えらい事を引き受けちまったな」
「おーい、幸太郎!」
「早速、来やがったよ。『何ですか?』」
「今朝、分家から干物が届いただろ。あれを何処にしまった?」
「聞いてないよ、ソンナノ…。えー『箱です、ハコ!』」
「何の箱だ?」
「『下駄箱』…じゃない。『違います、干物箱です』」

親父は呆れて黙り込んでしまった。一安心した善公、若旦那の豪奢な部屋でくつろぎ始めたが、花魁から届いた若旦那宛の手紙を見つけて…。
「ウフフフフ、無用心だなぁ…読んじゃお。【一筆示しあげ参らせ候】…決まり文句だなぁ。【先日、若旦那が起こしの折、私こと病により臥せっておりましたが、若旦那がお見えと聴き、ひとえに全快】…良くやるわ。【さて、橘さんのお客さん】…俺の事?」
つい、気を入れて読み始めてしまった。

「【あの善公は、もとより嫌な客なれど】…ひどい事書くなぁ。
【若旦那様のお供ゆえ、致し方なくお相手をしておりました】…そうなの」
手紙には、善公が橘と言う女郎の布団の下に、越中褌を忘れたことが書いてあった。
【若い衆が布団を上げたとたん、その臭気甚だしく、八町四方にまで広がって、石灰を撒くやら大騒ぎ。アーアー嫌なあの男。南瓜野郎のアホジンタ】
「チキショー!! 俺のコト馬鹿にしやがって!! 褌忘れても俺ァ客だ!!」

あんまり大声を出したので、下にいた親父が不審に思い、二階に上がってきて…見つかった。
「察すると、ウチの馬鹿ヤロウに頼まれたな?」
「へぇ、お宅様の『馬鹿ヤロウ』に…」
「お前が言うな!」
善公が説教されていると、若旦那が戻ってきて、表から小声で…。
「おーい、紙入れを忘れたんだ。用ダンスの引き出し、放ってくれ」
「アンニャロウ…忘れ物して戻ってきやがった。幸太郎、何処をノコノコほっつき歩いてるんだ!!」
「へーぇ、善公は器用だ。親父そっくり…」

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