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目ぐすり(目薬)あらすじ解説|禁演落語・字の読み違いで起きる艶笑噺の傑作

三遊亭鬼丸

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2026年5月30日(土):初投稿

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動画(三遊亭鬼丸・目薬)

目ぐすり(目薬)とはどんな噺か

「目ぐすり」は江戸落語の艶笑噺・滑稽噺。「目薬」「め尻に付けべし」とも呼ばれる。字の読めない職人の夫婦が目薬の効能書きを読み違え、妻のお尻に薬を塗ってしまうという笑話で、地口オチ(言葉遊びのオチ)の好例として知られる。上方では露の五郎(露の五郎兵衛)が得意とし、江戸落語でも橘家文左衛門・春風亭小朝・鈴々舎八ゑ馬・三遊亭鬼丸ら現役の演者が手がける現役の演目。

1941年(昭和16年)10月30日、禁演落語53演目の一つとして浅草のはなし塚に葬られた。戦後の解禁後は艶笑噺として復活し、今日も寄席に掛かることがある。

あらすじ

職人の熊さんが目を患って仕事に出られず、夫婦そろって芋ばかり食べる暮らしが続いている。かみさんがおばさんから金を借りてきて角の薬屋で目薬を買ってきた。ところが届いたのは粉の薬。袋の裏に効能書きが書いてあるが、熊さんは字が読めない。

ひらがなをたどりながら読むと「このくすりは・みみかきいっぱい・……・しりへつけべし」。次の字が読めない。かみさんに見せると、湯屋の入口の暖簾に書いてある「男湯・女湯」の「女」という字に似ていると言う。

「なるほど、これは女という字だ。すると——このくすりは、みみかきいっぱい、しりにつけべし」

熊さんは表と裏の戸締まりをさせ、かみさんに着物をまくってお尻を出させる。かみさんは「目が悪いのはおまいさんなのに、なんであたしのお尻をまくらなきゃならないの」と納得できないが、亭主の目のためならと渋々応じた。

耳かきに山盛りの粉薬を盛って塗ろうとするが、くすぐったくて我慢できないかみさんはじっとしていられない。夫婦ともに芋ばかり食べているせいで、かみさんの下腹に力が入ったとたん、大音響とともに薬の粉が熊さんの顔に直撃する。

「ああ、おっかあ、やるならやると言ってくれよ。もろにくらっちまった。……あーあ、薬も散ってしまって」

しかし目の霞が晴れているのに気づいた熊さんが言う。

「……う、なるほど。おっかあ、やっぱり薬はこうやってつけるもんだ」

これがサゲ。薬が「お尻経由」で目に効いた——という馬鹿馬鹿しい考えオチ兼地口オチである。

解説

噺の核心にある「女」という字の誤読は、崩し字(草書体)の「女」が仮名の「め」に見える、という実際の字形の紛らわしさを利用している。正しくは「このこなぐすりは みみかきにいっぱい め(女)じりにつけべし」、つまり目薬を耳かき一杯分、目の端(目尻)に付けよという指示だった。しかし熊さんは「じり」を「しり」と読み、「女(め)じり」を「女(おんな)のしり」と誤読する。江戸時代の庶民の識字率がそこまで低くはなかった実情を踏まえると、これは字が読めない職人層の夫婦ならではの笑いとして仕組まれた。

芋ばかり食べているという状況設定は、貧乏暮らしを示すと同時に、サゲでのガスの「大音響」を自然に成立させる伏線になっている。話の作りの精巧さが伝わる。

禁演の理由は廓噺・間男噺・艶笑噺が槍玉に上がった禁演基準のうち、「不道徳もの」または「艶笑もの」に分類されたためとみられる。廓を舞台にしない珍しい禁演落語の一つ。戦後は艶笑噺(官能的な笑いを含む噺)の系譜でいまも演じられており、禁演53演目の中では比較的口演機会の多い部類に入る。

関連演目

字の誤読が笑いになる点では「金明竹」「転失気」と同じ系譜に立つ。艶笑落語としては「首ったけ」「一つ穴」(ともに禁演53演目)が近い性格を持つ。同じ禁演落語53演目の廓噺として、文違い明烏五人廻し付き馬が代表格として知られるが、「目ぐすり(目薬)」は吉原や廓と無関係な長屋の夫婦噺で、禁演53演目の中では異色の位置にある。

文責:ライターズラボ編集部(2026年5月30日(土)執筆)

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