★立川談志/ろくろ首(ろくろっ首)

立川談志


ろくろ首(ろくろくび)は、古典落語の演目の一つ。
元々は上方落語の演目で、幕末から大阪で演じられていたものを、3代目柳家小さんが東京に移入した。
代々の柳家小さんが本家として得意にしたほか、8代目林家正蔵や3代目桂三木助もよく演じていた。現代では10代目柳家小三治も得意ネタにしている。

あらすじ

岩田の隠居がお茶を飲んでいると、そこへ甥っ子の松公(「与太郎」の場合も。いずれにせよ、落語で言う「与太郎」型のキャラクター)がやってくる。
モジモジしたあげく、突然大声で「おかみさんが欲しいッ」
なんでも、兄が結婚し、子供も生まれたのを見てうらましくなったのだという。
確かにこの男、二十五になってもおふくろと二人暮しで、仕事もせずにぶらぶらと遊んでいるばかり。
そんな奴でも、兄嫁がご膳に差し向かいで兄貴を「あなたや」などと色っぽい声で呼んでいるのを見て結婚したくなったというのだ。
「そりゃいいが、どうやって食わせるんだ?」
「箸と茶碗」
「そうじゃないよ。”どうしてかみさんを養ってくか”を訊いてるんだ」
「えーと…。お袋とかみさんを働かせて…」
「馬鹿野郎!」
呆れるおじさん。頭を抱えて考え込んでいると、おばさんが何か耳打ちをする。
「何々…。あ、なるほど。こういう奴のほうが感じないかもな…」
感心したおじさんは、『もしおまえがその気なら』とけっこうづくめの養子の話をする。
「さるお屋敷のお嬢さんで、年は二十歳。両親は早くに亡くなって、乳母さんと女中二人の四人暮らしなんだ」
資産はあるし美人だし、と聞いて松公は早くもデレデレ。
ところが、このお嬢様には奇病があって、草木も眠る丑三ツ時(午前2時ごろ)になると…。
「首がスーッと伸び、行灯の油をペロペロ…」
「そ…それ、どくどっ首」
「ろくろっ首だ」
「そんな遠くに首があったんじゃ、たぐらなくちゃならねえ」
「帆じゃねえや」
これまで何度も結婚したものの、そのたびに婿に逃げられてしまい、困っているというのだ。
最初は尻込みした松公だが、夜しか首は伸びないという話を聞いて
「一度寝てしまえば、夜中には目が覚めないから大丈夫だ」と思い直して結婚することにした。
しかし…ひとつ問題が。先方についたらご挨拶をしなければいけないのだが、この松公にきちんとした挨拶ができるわけがない。
考えたおじさんは、松公の褌(ふんどし)にひもを結び、接待役の乳母さんが何か言ったら
一回引っ張れば「さようさよう」
二回なら「ごもっともごもっとも」
三回なら「なかなか」
と、返事するんだと教え込む。
「これでまとまりゃ人間の廃物利用だ」
なんてひどい事を言い、松公を連れてお屋敷へ。
さて、本番。
「ご両親さまが、草葉の陰でお喜びでございましょう」
と、乳母さんに挨拶され、
「ごもっともごもっともォ。あとはなかなか」
などと言ってしまいおじさんをドギマギさせるものの何とか取り繕って話は進む。
ふと庭を見ると、そこにお嬢さんが通りかかった。
「フワ…。いい女だなぁ…。さようさよう、なかなか、ごもっともごもっともッ」
松公が騒ぎ出したので、何事かと後ろを見ると猫が褌に取りついてじゃれていたりして…。
さて、ご両人に縁があったのか婚礼ということになり、吉日を選んで盛大に式を挙げ、その夜…。
馬鹿でも床が変わると寝つかれず、夜中に目を覚ました。
時計がチンチンと二つ打つ。
「二つだから…『ごもっともごもっとも』かな。ウフフ…、あたいのお嫁さん、いい女だけど寝相が悪いな。枕が脇に落っこちちゃってるよ。えーと、ん? 首…クビ…。あばばーッ!!、伸びたーッ!!」
肝をつぶしてそのまま飛び出し、おじさんの家の戸をドンドン。
「伸びた、伸びた、伸びた、ワーイ!!」
「馬鹿野郎。静かにしろ。伸びるのを承知で行ったんじゃねえか」
「ダメだよ。初日から!!」
「”初日”も”千秋楽”もあるかい。さっさと家へ戻れ」
「ヤダ!! あたい、お袋んとこに帰る!」
「この野郎。どのツラ下げてお袋んとこへ帰れる。お前のお袋さん、大喜びしていたぞ。『明日はいい便りが聞けるんじゃないか、孫の顔が見られるんじゃないか』ってな。もう首を長くして待ってるんだ」
「フワ~ィ!! 家へも帰れねえ!」

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