年老いた男がふとしたきっかけで自分の過去を振り返り、「あのとき、別の選択をしていたら」と思いをめぐらせていく一席である。
ぼんやりとした日常の中で記憶がほどけ、若い頃の後悔や未練が少しずつ顔を出す。だが、この噺は人生のやり直しを重く語る説教ではない。昇太らしい軽やかな語り口で、老い、記憶、後悔、そして人間のどうしようもなさを、笑いの中にふんわり浮かび上がらせていく。
「もう一度生きられたら」という誰もが一度は抱く願いを題材にしながら、話は湿っぽくなりすぎない。むしろ、取り返しのつかない時間を抱えた人間の滑稽さと愛おしさがにじむ。人生をやり直したいと思うほど、いまの人生そのものが見えてくる。そんな余韻を残す、昇太の新作落語らしい一席。
補足:『人生が二度あれば』は春風亭昇太『はじめての落語(春風亭昇太ひとり会)』にも収録されており、同アルバムでは19分10秒の演目として配信されている。


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