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2015年01月17日(土):初稿
2026年05月15日(金):2019年にMITが発表した吸収率99.995%以上の超黒色材料と、Purdue大学の世界で最も白い塗料の情報を補足。古い「世界一黒い物質」表現を整理。
まるでブラックホールのようなベンタブラック(ヴァンタブラック)

[出典:POPULAR SCIENCE http://www.popsci.com/only-one-artist-can-use-blackest-material-in-world]
ベンタブラック(Vantablack)は、カーボンナノチューブから構成される、可視光の最大99.965%を吸収する物質です。光が当たると、それを跳ね返すのではなく「チューブの森」に捉え、チューブ内を何度も屈折させ、最終的には吸収されて熱として放散されます。
英国Surrey NanoSystems社が製造するVantablackは、非常に高い光吸収率を持つ黒色コーティングです。衛星搭載の黒体校正システムの一部として開発され、独特の物理的・光学的特性を活かし、衛星搭載機器、光学機器、美術分野などでの活用が見込まれてきました。
はじめてVantablackを見た人は、そのあまりの違和感に戸惑うのではないでしょうか。僕も初めて見たときは、戦時中の墨塗り教科書を連想しました。使ったことはありませんが。
画像の一部を、黒で塗りつぶしているようにしか見えませんよね。

ヴァンタブラックは、墨の黒さとは比較にならないほどの「真っ黒くろすけ」なんですね。
Vantablackはなぜ黒く見えるのか
「世界一黒い物質」、英企業が開発
英企業が開発した「世界で最も黒い物質」はまるでブラックホールのように光を吸い込み、それで覆われた物体の形状を人間の目で見分けることはできない。
「ベンタブラック」と名付けられたこの物質は光の99.96%を吸収する。黒い塗料や布地などに見られる通常の黒色は吸収率が95~98%。
ベンタブラックは直径2~3ナノメートルの多数のカーボンナノチューブからできており、アルミホイル上で生成される。ホイルだけのときは目に付く表面のしわも、ベンタブラックに覆われるとまるで消えてしまったかのように識別できなくなる。
[出典:CNN.co.jp]
光をほとんど吸収するので、反射光が戻ってきません。そのため、表面の凸凹や立体感が見えにくくなり、そこだけ穴が空いたような、不思議な見え方になります。
驚愕の光吸収実験!
照射された光が見えなくなる、まるでマジックのようなシーンです。
Vantablackは2014年に発表され、2016年当時もさらに光の吸収率を高める実験が進められていました。
いまも「世界一黒い物質」なのか?
Vantablackは、可視光を最大99.965%吸収する非常に黒い材料として大きな話題になりました。ただし、2026年時点で「世界一黒い物質」と断定する場合は注意が必要です。
2019年、MITの研究チームは、入射光の少なくとも99.995%を吸収するカーボンナノチューブ材料を発表しました。これは、Vantablackを上回る黒さとして報じられています。
つまり、Vantablackは「世界で最も黒い物質」として知られるようになった代表的な材料ですが、現在はさらに高い吸収率を示す超黒色材料も登場しています。この記事では、Vantablackを「超黒色材料の代表例」として紹介します。
ベンタブラックの科学とアートの融合

科学とアートは、ときとして予想外の形で融合し、私たちの想像を超える作品を生み出します。その代表例の一つが、ベンタブラックです。
この素材はもともと、宇宙産業や光学機器などでの使用を目的として開発されました。しかし、その特異な黒さは、芸術家たちの想像力も強く刺激しました。
ベンタブラックで覆われた物体は、光が戻ってこないため、形や奥行きがつかみにくくなります。立体物であるはずなのに、まるで黒い穴や切り抜きのように見える。その視覚的な違和感が、アート作品としても強い力を持つのです。
たとえば、アーティストのアニッシュ・カプーアは、Vantablackを使用した作品で知られています。一方で、Vantablackの芸術利用をめぐっては、使用権や独占性をめぐる議論も起こりました。素材の特性だけでなく、「誰がその黒を使えるのか」という点まで含めて、アート界で大きな話題になったのです。
科学の観点から見ると、ベンタブラックは材料科学の成果です。炭素ナノチューブを密集させ、その微細な構造の中に光を閉じ込めることで、極端な黒さを実現しています。
この黒いキャンバスは、単なる色の深さだけではなく、私たちが「見る」という行為そのものを問い直します。そこに物体があるのに、輪郭や凹凸が見えない。ベンタブラックは、視覚と物質の関係を揺さぶる素材なのです。
暗闇を超える色、ベンタブラックの神秘

暗闇を超える色。それがベンタブラックです。この驚異的な物質は、光の大部分を吸収し、見る者を深い黒の世界へと引き込みます。
ベンタブラックは、単なる黒い塗料ではありません。光と影の境界を曖昧にし、物体の形を見えにくくする、視覚の常識を揺るがす素材です。
科学的には、炭素ナノチューブの構造が光を捕捉し、反射を抑えることで、極端な黒さを生み出しています。アートの世界では、その黒さが空間と物体の境界をぼかし、観る者に強い印象を与えます。
ベンタブラックの魅力は、視覚的なインパクトだけにとどまりません。私たちは物を「反射した光」によって見ています。では、その反射がほとんどなくなったとき、そこにある物体をどう認識するのか。ベンタブラックは、そんな根本的な問いを投げかけてきます。
ブラックがあるなら、ホワイトがあってもいいじゃない?
「ヴァンタブラック」があるのなら、「ヴァンタホワイト」があってもいいじゃない?
そう思うのは、いつまでも少年の心を忘れない人が考えることです。
では、光をほぼ100%近く反射する白はあるのでしょうか?
はい。ありました。
白は、全ての色の可視光線が乱反射されたときに、その物体の表面を見た人間が知覚する色である。無彩色で、膨張色である。
100%の反射率を持った「理想的な白色」の物体は実在しない。現在、ほぼ理想的な白色物質として利用されているのが酸化マグネシウムや硫酸バリウムであり、これらは可視光線のほぼ全領域にわたって99%以上の反射率を示す良好な白色素材である。
[出典:wikipedia]
なるほど、白は乱反射された光を見たときの色なんですね。

2021年には、Purdue大学の研究チームが、太陽光の98.1%を反射する「世界で最も白い塗料」としてギネス世界記録に認定された塗料を発表しています。この塗料には硫酸バリウムが使われ、光を強く散乱させることで高い反射率を実現しています。
つまり、黒の側ではVantablackやMITの超黒色材料が光を吸収し、白の側ではPurdue大学の超白色塗料が光を反射する。どちらも、光をどう扱うかという材料科学の面白さを見せてくれます。
白塗りすると白さが映えて、いいそうです。

ヴァンタブラック技術を応用した商品
この技術を服に応用したらどうだろうか?
そう考える商人たちは多いに違いありません。
そんな質問を開発者にしてみたところ、秒速で却下されたようです。ボール紙の切り抜きみたいに見えるでしょう、と開発者のノーザム氏は語っています。
想像図。こんな感じらしいです。

ううむ……。
所長が作ったコラージュがあまりにも下手なので、なんとも言えませんが、頭部と腕、脚だけが三次元で、ドレスは二次元的な感じになるのでしょうね。
たしかに、おかしな感じがします。
イメージに近いのは、こんな感じでしょうか。全身黒塗りもおかしいですが。

ヴァンタブラックは、不必要な光を抑制することによって性能が向上するものに向いています。たとえば、空撮カメラ、宇宙望遠鏡、赤外線スキャンシステムなどへの応用が考えられています。
2019年に登場した、さらに黒い材料
2019年、MITの研究チームは、カーボンナノチューブを使った新しい超黒色材料を発表しました。この材料は、入射光の少なくとも99.995%を吸収するとされ、当時「これまでで最も黒い材料」として報じられました。
この素材は、塩素エッチングしたアルミ箔の上にカーボンナノチューブを成長させる過程で偶然生まれたものです。研究チームはもともと、カーボンナノチューブの導電性を高める研究を進めていましたが、その過程で極端な黒さが確認されました。
このMITの超黒色材料は、アーティストのディムート・シュトレーベによるアート・サイエンス作品にも使われ、ダイヤモンドを黒く覆って見えにくくする作品として紹介されました。
そのため、Vantablackについて語るときは、「かつて世界一黒い物質として大きな注目を集めた材料」「超黒色材料の代表例」と表現するのが、現在ではより正確です。
光を吸収する黒と、光を反射する白。どちらも、見た目のインパクトだけでなく、宇宙観測、冷却技術、光学機器、アートなど、さまざまな分野につながっています。色の話は、思った以上に科学の深いところへ続いているのです。
文責:ライターズラボ編集部(2026年05月15日(金)執筆)


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